今回は第113回医師国家試験113A1について考察します
113A1
肝硬変を母地として発生した最大径2cm、単発の肝細胞癌に対する治療方針を決定する上で重要でないのはどれか。
a 腹水の有無
b ビリルビン値
c 肝硬変の成因
d 肝性脳症の有無
e プロトロンビン時間
※以下考察は個人的解釈によるものを厚労省、ガイドラインを参考に記載しています。
間違い、アップデート等ありましたら、お手数ですがご容赦、ご連絡頂けると幸いで
す。
テーマ:Child-Pugh分類
類題:104A30 104G18 106B19 109I14 112C53
解説:
肝細胞癌の治療方針はchild-pugh分類を基に考えます。
Child-Pugh分類:肝障害度を示す尺度。
|
ポイント |
1点 |
2点 |
3点 |
項目 |
脳症 |
ない |
軽度 |
ときどき昏睡 |
腹水 |
ない |
少量 |
中等量 |
|
血清ビリルビン値(mg/dL) |
2.0未満 |
2.0-3.0 |
3.0超 |
|
血清アルブミン値(g/dL) |
3.5超 |
2.8-3.5 |
2.8未満 |
|
プロトロンビン活性値(%) |
70超 |
40-70 |
40未満 |
各項目のポイントを加算しその合計点で分類する。
Child-Pugh分類 A:5-6点 B:7-9点 C:10-15点
過去の出題から考えると
・肝細胞癌の治療方針を決定する項目
・肝予備能
という言葉で問われています。
過去にも非常に多く出題されている事から覚えておいて損はない項目と考えます。
上記参考に回答はc(肝硬変の成因)という事が分かります。
肝細胞癌の治療方針の詳細については割愛します。
肝硬変の成因
間違い選択肢として出題された「肝硬変の成因」の重要性の考察です。
◉今後の国家試験として
・肝細胞の治療方針選択
・肝予備能評価
で考えると
今後は「肝移植」をテーマにした出題が考えられます。
肝移植では背景肝(ウイルス性、自己免疫性、薬剤性、原因不明のもの)が評価項目として含まれます。
◉初期研修医になってから・・・
僕が研修していた頃、カンファレンスでは背景肝(ウイルス性、自己免疫性、薬剤性など)を問われる事がありました。
理由は背景肝によってスクリーニングする検査項目が変わってきます。また肝硬変に関わらず、治療、予防医学の面でも背景肝によってアセスメントが変わります。
初期研修の場合は肝障害がある患者さんに問診項目を増やす事が最初の一歩になるかもしれません。
ウイルス性肝炎の治療が発展してきている事から今後は、生活習慣病へとトピックがシフトしていくと考えられます。
Child-Pugh分類って重要なの?
医師国家試験では肝予備脳、肝細胞癌の治療方針での出題に絞っています。研修医時代、麻酔科での業務を行っていての体験を考慮すると全ての診療科で必要な知識と考えます。
内科では肝機能によって輸液・栄養バランスや、背景肝による専門領域コンサルトが関わります。
外科・麻酔科領域では周術期死亡率が関わります。
A:10%
B:30%
C:76-82%
他合併症や年齢など様々な要因が死亡率に関わりますが
治療方針として手術を選択する場合、分類による死亡率を知っているだけでコンサルト・プレゼンの詰め方が変わります。
また手術を考える患者さんに説明する時も、参考値として役立ちます。
カンファレンスで臨床検査項目を一つ一つを述べるより、child-pugh分類で総括して一言添えるだけで印象が大分変わります。
以上
初の問題解説となりました。
ご要望・改善点・間違いなどのご指摘がある場合は
コメントして頂ければ幸いです。